地拵え(じごしらえ)
雑草が生い茂っていると、せっかく苗木を植えても育たない場合があります。
周囲の雑草や低木などを刈払い、不要なものを除去して、
苗木が生長しやすい環境を整えるのが地拵えです。
人間に例えるなら出産前の準備、ベビーベッドやミルクを揃えている段階で、
一番最初の重要な作業です。
植栽
山の斜面に苗木を植える作業です。
林業でも機械化・効率化が進んでいますが、植栽に関しては実用化に向けた研究段階で、
一本一本手で植えています。
人間で言うならばまさに生命誕生の瞬間、初めてのご対面にあたるでしょうか。
下刈・下草刈り
苗木を植えた後も、成長を妨げる植物を刈り払って取り除かなくてはなりません。
この作業を行わないと、地中の水分が周囲の植物に奪われる上に、日陰になってしまうので、
ひどいときには枯れてしまう場合もあります。
苗木がある程度成長して、周囲の植物に負けないようになるまでは、毎年夏に行うのが良いとされています。
いわば乳幼児期の一番手のかかる時期といっていいかもしれません。
除伐
苗木がある程度成長し、周囲の草木を追い抜いたとしても油断は出来ません。
今度はつる性の植物が巻きついてきたり、より大きな樹木との生存競争が始まります。
この次の段階の競争から木を守る為、周囲の樹木を切ったり、同じ時期に植えたものでも
成長の見込みがなくなった樹木を伐ったりすることを除伐といいます。
幼児期はよく友達とケンカして親に怒られたものです。
枝打ち
苗木を植えてから10年ほどになると、木もだいぶ大きくなって、枝ぶりも良くなってきます。
こうなってくると、その枝が日光を遮り、今までとは逆に次の世代の成長を妨げる側に回ってしまいます。
このため、枝打ちといって、枝を付け根から切り落として、他の木々の生長を促します。
枝打ちを行うことで、その部分は人間でいうところの「かさぶた」になり、年月と共に
徐々に傷が治って平らになります。これが節のない、有用な材を作ることにもつながるのです。
私自身も、10代はやんちゃで怪我をしやすい時期だった記憶があります。
間伐
手塩にかけて育てた樹木も20年もすると一人前に成長し、社会人として荒波に揉まれます。
周囲の樹木と衝突しあいながら生きていると、木でも疲れてやせ細ってしまいます。
そこで、少々残酷ですが、育ててきた木が今後も健やかにまっすぐ育つように、
周囲の樹木を間引いてしまうことも必要になってきます。これを間伐といいます。
いわば「森林界の就職活動」と言えるでしょう。
就職活動に成功し、居場所を獲得した木は、その分だけ光、つまり植物にとっての「お給料」を受け取れます。
人間でもお金が転がり込んでくると知らない親戚が名乗り出てくるように、
いいお給料をもらっている木の周りには微生物やコケ類が集まり、いきいきとした場所になります。
高給取りなので自然と地元に根を張り、落ち着きのある生活を送れるのです。
主伐
株式会社森林で経験を積み、50歳にもなるともはや部長級。
大きく太く育った木は収穫の時期を迎えます。
長年の社会生活で一回り成長した木は、それなりの高給取りになっているはずです。
玉切り
社内でも上層に上り詰めると、身銭を削って部下を喜ばせる場面も出ます。
どっしりとした丸太のようになった木は、その体を3~4メートルに切り分けられ、
社会に貢献する木材の形にされるのです。この過程を「玉切り」と呼びます。
小出し・運搬
こうして長い株式会社森林での長い勤めを終えた木は、森林の皆に別れを告げて
第二の人生をスタートさせます。トラックに乗って市場に移り住んだ木材は、
木材業者さんと運命の出会いを果たします。
あるものは建築物として、あるものは家具として、それぞれの新しい家族と過ごすのです。
中には惜しくも若くして亡くなり、バイオマス発電所にて燃料となって
新たな命を育むエネルギーとなるものもいるでしょう。
こんな風に、木は、人間の一生に寄り添いながら、生きているのです。