森林の機能
1.木材生産機能
森林で育てられた樹木は、建築物、家具等の材料として、人間の生活に役立てられていることは言うまでもありません。もちろん、材として活用される木々以外にも、様々な植物や動物、昆虫など、多種多様な生命が生活を営んでいる場所です。このように、森林は木材をはじめとして多種多様な生命・資源を生産する役割があります。
2.水源涵養機能
森林には、雨を適度に蓄えたり河川に流すことで、流れてくる水の量をコントロールし、急激な増水や渇水を防ぐ役割があります。雨が降ると森林はまず木々の枝葉や落ち葉などで受け止め、ある程度の量を蒸発させます。一方、地面にしみこんだ水は植物に吸収されたり、地面の隙間を通って移動するので、その流速はある程度緩やかになります。このように森林が雨を受け止め大気に還したり平地に流したり等、様々な経路で移動させることで河川に流入する水の量がある程度一定になるのです。
3.山地災害防止機能
山地で起こる代表的な災害として土砂崩れが挙げられますが、健全な森林では土砂崩れは起こりにくいことがわかっています。
山林の植物が枯れると、根が弱まるのはもちろんのこと、地面の表層のコケ類なども直射日光を受けて弱まり、結果として地面が崩れやすくなります。多様な植物が地面に根をはることで、土壌を抱え込むネットのような役割を果たし、強固な地盤が出来上がるのです。
4.生活環境保全機能
植物は光合成により生命が呼吸をする上で必要不可欠な酸素を生産します。また、同時に二酸化炭素を吸収することで、地球温暖化を防ぐ役割もあります。多くの植物が生活する森林を守ることは、地球全体を守ることにつながります。また風を防いだり、気温を緩和するなど人間生活の環境の保全に深く関わっています。
5.保護文化機能
古い和歌にも富士山が詠まれていることからもわかるように人間は山林に囲まれて文化を育んできました。また、多くの人が登山を楽しみ、レクレーションにも広く活用されているように、心身を鍛え健康を保つ上でも重要な役割を果たしています。このように、有史以来人間の精神的・身体的な健康の維持や増進に寄与するとともに、多様な生命の活動の場となることで生物を保全し、学術的な研究の場としてもその働きは不可欠なものです。
森林の種類
森林の種類も考え方によって様々存在します。
1-1.人工林
植林などによって人の手によって仕立てられた森林のことです。日本の森林の約4割は人工林です。若い森林は多くの二酸化炭素を吸収するため地球温暖化対策に非常に有効ですが、老齢木は二酸化炭素吸収速度が小さいです。そのため適正な管理の元、伐採、木材利用、植林を行うことが必要となります。例えば福井市の人工林面積は19,358haです。
1-2.天然林
一般的には人の影響を受けていない森林のことですが、林業においては施業上、更新が人為的でないものも天然林です。天然林であっても若い樹木への世代交代が行われない時は人の手によって更新を行わなければなりません。
2-1.単層林
森林の育った部分を全面一度に伐採し、また一斉に植林するという方法で施業される森林のことです。この手法では植えられた時期が全て同じの樹木で構成されるため、樹齢が単一になります。福井のほとんどの人工林は単層林です。
2-2.複層林
かつての単層林の考え方では、伐採後に山が丸裸になってしまい、森林の持つ機能が十分に発揮されないという問題がありました。
そこで、近年では樹木を必要な分だけ伐採(間伐)して、常にある程度の樹木を残した状態を保ちつつ伐採した場所に新たな苗木を植えたり、若い樹木の育成を大切にするという方法がとられるようになりました。また、針葉樹の人工林の中に広葉樹を混ぜて育てる(針広混交林)試みも広まっています。このように、複数の世代・複数の樹種の層で成り立っている森林は、その公益的機能を恒常的に発揮できるというメリットがあります。しかし、雪害など複層林のデメリットも考慮しなければなりません。
※林層 一言で森林といっても、その種類は様々で、樹木の種類や密度、年齢などによってその概観は様々です。
そのため森林簿上では森林を針葉樹、広葉樹、竹林、無立木地、更新困難地といったように林相に種類分けします。
3-1.環境保全の森
森林の公益的機能(水源涵養、山地災害防止等)の発揮を主な目的とした森林のことで、その機能を持続的に発揮するために必要な森林整備、保全が行われます。林道から遠いなど木材生産をしても経済的採算が見込めない森林も含まれます。
3-2.資源循環の森
木材の持続的な生産を主な目的とした森林のことで、効率的かつ安定的な木材資源の利活用を基本としつつ公益的機能も留意しながら森林整備が行われます。造林適地であり団地的なまとまりがある、または道から近いなど木材の搬出条件が整っている森林が当てはまります。
3-3.観光景観の森
優れた森林景観を形成することで観光振興に寄与することが期待される森林のことです。
3-4.生活保全の森
気象災害や獣害などから地域住民の生活を守るために整備が必要な森林のことで、集落や生活道路等に隣接する森林が主になります。
林業について
林業は森林を育て、木材を生産したり、森林の機能を最大限に発揮させることを目的とした仕事です。森林を育てるサイクルは以下の通りです。
①地拵え(じごしらえ)
雑草が生い茂っていると、せっかく苗木を植えても育たない場合があります。周囲の雑草や低木などを刈払い、不要なものを除去して、苗木が生長しやすい環境を整えるのが地拵えです。
②植栽
山の斜面に苗木を植える作業です。林業でも機械化・効率化が進んでいますが、植栽に関しては実用化に向けた研究段階で、一本一本手で植えています。
③下刈り
苗木を植えた後も、成長を妨げる植物を刈り払って取り除かなくてはなりません。この作業を行わないと、地中の水分が周囲の植物に奪われる上に、日陰になってしまうので、ひどいときには枯れてしまう場合もあります。苗木がある程度成長して、周囲の植物に負けないようになるまでは、毎年夏に行うのが良いとされています。
④除伐
苗木がある程度成長し、周囲の草木を追い抜いたとしても油断は出来ません。今度はつる性の植物が巻きついてきたり、より大きな樹木との生存競争が始まります。この次の段階の競争から木を守る為、周囲の樹木を切ったり、同じ時期に植えたものでも成長の見込みがなくなった樹木を伐ったりすることを除伐といいます。
⑤枝打ち
苗木を植えてから10年ほどになると、木もだいぶ大きくなって、枝ぶりも良くなってきます。こうなってくると、その枝が日光を遮り、今までとは逆に次の世代の成長を妨げる側に回ってしまいます。このため、枝打ちといって、枝を付け根から切り落として、他の木々の生長を促します。枝打ちを行うことで、その部分は人間でいうところの「かさぶた」になり、年月と共に徐々に傷が治って平らになります。これが節のない、有用な材を作ることにもつながるのです。
⑥間伐
手塩にかけて育てた樹木も20年もすると一人前に成長し、社会人として荒波に揉まれます。周囲の樹木と衝突しあいながら生きていると、木でも疲れてやせ細ってしまいます。そこで、少々残酷ですが、育ててきた木が今後も健やかにまっすぐ育つように、周囲の樹木を間引いてしまうことも必要になってきます。これを間伐といいます。
⑦主伐
最終的に大きく太く育った木は収穫の時期を迎えます(一般的には30年~60年)。
これら①~⑦の施業を1サイクルとして持続的な森林管理がなされています。
途中のサイクルを止めてしまうと山林内は荒れてしまいます。
木(木材)について
木が生まれたのは約3億年前で、イチョウの木だと言われています。木の種類も針葉樹から広葉樹まで多種多様に存在しています。木は根から栄養と水分を吸い上げ、葉では空気中に存在する二酸化炭素を取り込んで、太陽エネルギー等の働きで糖分をつくり細胞分裂を行いながら少しずつ成長をしていきます。これが光合成であり、この過程で生み出される酸素によって人間も含め動物が生きていくことができるのです。
木の成長は主に春から夏にかけて行われ夏の終わりになると成長が鈍ります。季節ごとによる成長の違いによって皆さんが知っている年輪が見られることになります(一般的には春から夏にかけて成長する部分を早材、それ以外を晩材と呼びます)。晩材の方が色が濃く線のように見えます。
丸太の断面を右側に示しますが、内側色が濃くなっているのに対しその外側は色が薄くなっています。濃い部分を心材(赤身)、薄い部分を辺材(白太)と言います。実は辺材は一部の細胞は生きていますが、心材はすべての細胞が死んでしまっています。細胞が死んではいますが、その代わり材としての耐久性が非常に高いため土台等に使われることもあります。逆に辺材は虫や微生物の影響を受けやすく耐久性が劣ります。
丸太
・丸太の販売単位
紙が1枚、2枚で数えられるように、木材にも数え方があります。ホームセンターなどで購入する角材や板材はそれぞれ何本、何枚単位で購入されますが、丸太を市場などで業者に販売する際には、体積(立方メートル)単位で販売されます。
・丸太の種類
木というものは根元が太く、頭のほうが細い形をしています。このため3mにしろ4mにしろ、同じ長さで伐倒すると根元を切った材のほうが太く、枝打ちにより無節となっている場合があるため価値があります。この根元の価値のある材を一番玉(元玉)と呼び、順に二番玉、三番玉…と呼びます。